時代の変化についてけない中間管理職

不確実性が高く多様性が必要な時代に管理職に必要な息抜き方をお伝えしていきます。

システム思考をわかりやすくまとめてみた

第1回目は最近よく耳にする「システム思考」について。

    

「システム思考」とは?

「システム思考」について書かれているサイトはいくつかあり、解釈はさまざまです。

私自身が「システム思考」とは?と聞かれて一言で表すなら、

それはつながりを明らかにすること」であると言えます。

 

問題が起きる時には、必ず原因があります。

その原因の発生には、そうさせているシステムが必ず存在しています。

物事を単体や表面上だけで見るのではなく、相互の関連性、関係性に着目し、

静止的ではなく動的に、断片的ではなく全体的に、

そして変化を捉える見方がシステム思考です。

 

ちょっと言葉では説明が難しいのが、このシステム思考なのですが、

参考例や考え方を以下に書いていますので、ぜひ理解が深まればと思います。

 

ちなみに「システム思考」という考え方は、

ピーター・M・センゲ(MITマサチューセッツ工科大学経営学者)

という方が1990年代に改めて広めた理論になります。

 

ピーター・M・センゲ 1947年-
クリス・アージリスが最初に提唱した「学習する組織」という理論を世界に広める。

SoL創設者、マサチューセッツ工科大学の上級講師であり経営学

 

    

なぜ今、システム思考が必要なのか?

 

そもそもなぜ今、システム思考という考え方が必要なのでしょうか?

 

それはビジネス環境の複雑性そのものだと言えます。

 

社会的には、いろいろな価値観、考えをもった多様性のある方が増加する一方、

物事を構成する要素も物理的にも増え続ける一方です。

また、昨今の予期しない感染症など、外部環境の変数も増加しています。

 

こういった不確実性が高い社会だからこそ、

物事を単体で捉えるのではなく、システム全体として捉えるが事が重要になっています。

 

ここで一つ、似たような言葉ですが意味が異なるので紹介します。

Complecated System・・・複雑化されたシステム

Complex System・・・複雑なシステム

 

さて今回の「システム思考」は、どちらの考えに近いでしょうか?

 

Complecated Systemは、その名の通り複雑化されたシステムです。

複雑化されたシステムの特徴は、システム自体は複雑(例えば車や飛行機の構造などは複雑ですよね?)であるものの、

入力に対して出力が同じであるなど、その動作や、その先の動きが予測できる特徴を持っています。

 

もう一つのComplex System、複雑なシステムは、

一言で表現するのなら「答えがない」システムの事です。

    

システム思考の

「答えがない」システムの例として、世界の金融市場で考えてみるとどうでしょうか?

 

金融市場の動向を見ていく上で、

景気動向金利水準、為替の影響、国内外の政治の動向、国際情勢、災害・天候、外国人投資家の動向・・・

などの複数の要素があります。(この時点で複雑ですが、これ以外にも要素は複数あります)

 

こういった要素同士が複雑に共鳴、影響し合いうからこそ、

今後の経済の行方は誰にも予測できない、

まさに「答えがない」システムの代表例です。

 

またここでもう一つ大事なポイントがあります。

それは、要素同士が複雑に影響しあい、創発する事です。

 

景気動向(要素1)に左右され、金利(要素2)が変動し、外国人の投資家の投資(要素3)の動向も変わります。その結果、金融市場に投資マネーが流入しなくなり(結果的に要素がからみあい創発された現象)、経済が停滞する可能性があります。

 

ここで皆様、おわかりでしょうか?

 

冒頭で述べたシステム思考とはまさにこの

「つながりを明らかにすること」そのものなのです。

 

 

    

システムとして考えるために

重要な事とは?

それではどうやって、「システム思考」という考え方を使っていくのか?

 

重要なポイントを2点紹介します。

「正しい構成要素に分解する事」

「分解した要素同士には創発作用があること」

 

この2点を正しく理解することがシステム全体を理解することにつながります。

 

皆様は、鳥の目、虫の目、魚の目という言葉を聞いた事がありますか?

 

鳥の目・・・高い位置から「俯瞰的に全体を見回 して」見る視点。物事をZoom Outして見る事ができる視点

虫の目・・・「複眼的に物事を深く」見る視点、対象に対してZoom Inして見る事ができる視点

魚の目・・・「時間軸の流れを」見る。対象が時間の経過と共にどういった影響がでるのかを見る視点

 

いかがでしょうか?

これがシステム全体を見るために重要になる視点です。

 

例えばここでもう一つ、「車の渋滞」を例を出したいと思います。

「車の渋滞はなぜ起こるのか?」と聞いて皆様は何が原因と考えますか?

 

運転手の居眠り、思わぬ事故の影響、交通ルール違反車両があった、などでしょうか?

もちろんそれも大事な要素です。ただしそれだけでしょうか?

ここでシステム全体を理解する上で使う視点が、鳥の目、虫の目、魚の目です。

 

鳥の目であれば、全体を俯瞰して見るので、Zoom Outしたものの見方です。

全体を俯瞰した場合、他の道路がすでに渋滞していて迂回車が多く渋滞したかもしれませんし、

数十キロ先で大きなイベントがあった関係で渋滞している、

また、航空会社がストライキであったため、そもそも車の利用が増えたのかもしれません。

天候が雨で渋滞したのかもしれませんね。

こういったより大きな枠で見ることが鳥の目、Zoom Outしてみる方法です。

 

次は、虫の目で対象に対してZoom Inして見ます。

虫は人間よりも小さく、対象物をより近くでみるので、近眼的に複眼で見るという見方です。
例えば道路を対象にした場合、道路上に小さな陥没があった事で渋滞が発生したのかもしれません。

また、そもそもペーパードライバーで運転が苦手だったのかもしれません。

さらにドライバーにZoom Inしてみると体調が悪いので運転が遅くなったため、渋滞になったという心理状態の可能性もあります。
このように、対象に対して複眼的にZoom Inしていく見方が虫の目の考え方です。

 

最後に魚の目、これは物事を時間軸で捉えることです。

今回の例で言えば、渋滞の時間帯がラッシュアワーの時間帯で渋滞した、

高速道路であれば夜間休日割引の時間帯での混雑が渋滞を引き起こしたかもしれません。

お盆や年末年始ももちろん時間時期の一つです。それが原因で渋滞する可能性もあります。

 

こういったものの見方を、鳥の目、虫の目、魚の目を使って見る事で、

原因を構成する要素をもれなく把握することができ、また要素同士の創発性もあわせて考えることができます。

 

 

    

システム思考のメリデメ

システム思考のメリットはなんといっても、解くべき課題の精度が上がる点です。

 

課題の要素を分解し、創発性を理解する、そうすることで原因特定に役立ちます。

しかし、残念ながらこれも100%ではありません。

 

それは今日のシステムが常に複雑さを増し続けているためです。

そのため100%ではないが、角度、精度をあげるための思考法とご理解ください。

 

またそれ以外のメリットとして、課題を進めていく上で、全体のコンセンサス(共通認識)が容易になります。

抜け漏れがない状態で考えられているため、次の行動が早くなるというメリットもあります。

 

そして私個人が最もこのシステム思考がすばらしいと感じているのが、

原因を特定しにいった場合に、人が原因にならないという点です。

この考え方は「○○さんが悪い」といったような単一的な考え方では終わりません。

「〇〇さんをそうさせた物が何なのか?」、その背後にある理由、背景にまで眼をむけます。

虫の目を使い複眼的に見て、〇〇さんをそうさせたシステム全体を見る事が可能になるためです。

 

 

逆にデメリットは、時間がかかるという点でしょうか?

課題を解決する上で、じっくり時間をかけられればよいですが、そうではないビジネスシーンもたくさんあります。

 

そんな時に「要素を一つ一つ・・・」「えっと、要素の創発性が・・・」「鳥の目でみると・・・」と、

考えては時間とのバランスが悪いです。だからこそビジネスマンはある程度の経験があり、

経験に基づく直感で判断されている方も多いのではないでしょうか?

 

しかしながら一つ言えることは、現在、私たちを取り巻く環境は、

過去の生産労働型とは違い、不確実性の一途を辿っています。

そういった中で正しく意思決定するためにも、このシステム思考が重要であることは間違いのない事実です。

 

次回は最後に記載した、個人がもつ直感、経験則が判断にどういった影響をもたらすのか、

行動する上での科学(バイアス)についてご紹介いたします。

 

 

 

 

システム思考のまとめ 

 

●複雑性が増していく環境下だからこそ、重要な考え方の一つ

 

●物事を表面的、単眼でみるではなく、そうさせているシステム全体を見る、つながりに眼を向ける

 

●構成要素を分解して(鳥の目、虫の目、魚の目)見る

 

●分解した要素同士は創発しあい、影響力を高めあったりする

 

●100%の正解はない、不確実性の中にいる事を理解する