時代の変化についてけない中間管理職

不確実性が高く多様性が必要な時代に管理職に必要な息抜き方をお伝えしていきます。

無意識のバイアス(思考の偏り)がもたらす判断への影響

前回は「システム思考」をテーマに、問題は表面的なものではなく、そのシステムを構造的に捉える事、そしてその「つながりを明らかにする事」を紹介をさせていただきました。

 

今回は構造を見たり、判断したりする上でどうしても避けられない、人が持つ思考の偏り、バイアスについて紹介したいと思います。バイアスは無意識であり、全員思考の偏りがあります。

 

第二回は、バイアスがもたらす判断への影響について紹介をしたいと思います。

 

  そもそもバイアス(思考の偏り)とは何か?

バイアスとは英語で「偏り」を表します。ここでは一般的に言われている「思考の偏り」と表現していきます。

 

それではここで、簡単にバイアスを確認するクイズです。

 

「高身長のイケメンと、明らかにメタボな男性がいて、それぞれ今年はやりのファッションについて話をしています。皆さんはどちらの話の方が説得力があると思いますか?」

 

おそらく前者の「高身長のイケメン」の方を選んだ方がほとんどだと思います。これがバイアス、思考の偏りです。実際には話の内容は聞いていないのにも関わらず、そう思い込む心理状態です。

 

  なぜバイアスがかかるのか?

それではなぜ人はバイアスにかかるのでしょうか?

 

基本的なメカニズムとして人間は、自分の直感、または経験則から情報を引き出し、答えを紐づけてしまう生き物であると言われています。ここで言う直感的な思考、論理的な思考については後述しますね。

 

先ほどファッションの例で言えば、高身長のイケメンなんだから、かっこいいファッションに違いない!という思い込みが前提としてあるため、イケメンの話を聞きたいという、偏りにつながるという事になります。

 

  バイアスの種類

それではここでは代表的なバイアスとその例をお伝えします。ご自身の経験でも当てはまるかぜひご確認ください。

 

 確証バイアス(Confirmation Bias)

自分が正しいと思う情報を中心に収集してしまうバイアスです。

人は誰しも思い込みを持っています。他にどのような情報があっても、自分の判断が正しいという証拠ばかりを集めてしまう傾向があります。

 

例えば、インターネットでショッピングをする時に、その商品の評価やレビューを参考にする事があると思います。その内容(情報)を見ている時、自分にとって都合が悪い情報を排除し、都合の良い情報のみに目がいっていませんか?それが、自分の判断が正しい、その補足となる情報を中心に見てしまう、確証バイアスです。

 

 

 生存者バイアス(Survivalship Bias)

これは、残ったもの(生存したもの)の結果のみで判断してしまうバイアスです。以下の写真をご覧ください。

 

これは戦争中に無事に自国へ帰還できた、軍用機の損傷位置を表したものです。赤い点は帰還できた軍用機を調べ、損傷していた箇所を表したものです。

 

あなたは軍用機の設計エンジニア、この画像を見て、どこを強化しますか?

 

ほとんどの方が損傷があった赤い点の箇所と答えるのではないでしょうか?ここには大きな落とし穴があります。これは残ったもの=無事に帰還できた軍用機の情報のみです。逆に赤い点以外を打たれた軍用機は、残念ながら戻ってくることができなかった、そういうことになります。本当に強化するべきポイントは赤い点がない箇所になります。

 

生き残った情報のみ、今見えている情報のみで判断してしまう、これが生存者バイアスです。

 

 

 サンクコスト効果(Thankcost)

これは、すでに投資をしたものを正しいと考えてしまい、合理的な判断ができなくなってしまうバイアスの事です。心情とすると、「もったいない」と思う気持ちがでているバイアスです。

 

ランチ時間に、お店の前に行列ができていてすでに20分待っていたとします。あと数人がでてくれば自分もお店に入れます。あなたならどうしますか?

 

すでに20分待ちあと数人なら待つ方が多いのではないでしょうか?自分の時間をすでに投資しているものを正しいと考えてしまっており、本当に食べたいランチなのかという合理的判断ができていないですよね。これがサンクコスト効果です。

 

 

 現状維持バイアス(Status duo Bias)

これはその名の通り、自分が知らない事や未知の状況は受け入れたくないというバイアスです。人は今問題がなければ変わる必要性がない=変化を嫌う生き物です。

 

日常生活でいうと、通勤、通学で同じ道をいつも通る事や、同じお店で同じメニューしか注文しない事もこの現状維持バイアスが起きている心理状況になります。

 

 

 自信過剰バイアス(Overconfident Bias)

自信過剰バイアスは、論理的な根拠はないが、自分の能力や判断に自信を持つバイアスの事です。もちろん「自分はできる!」という気持ちを持つ事は大事ではありますね(笑)

 

例えば、世界最高峰の山、エベレストにこれまで何度も登頂を成功した方がいるとします。おそらくその方は、「次の登頂も成功できる」と言うと思います。自分の過去の経験から自信を持った発言であると言えますね。

 

 

 アンカリング効果(Anchoring

続いてはアンカリング効果についてです。これは最初に提案された選択肢の情報を軸に考えてしまうバイアスです。

 

皆さんは遅刻をした経験はありますか?その時に相手に対してこのアンカリングを無意識に使っています。例えば、遅刻をして本来であればあと30分で到着できるのに、「あと40−50分」と言ったり、「あと1時間かかる」と言ったり、より遅く伝える事はありませんか?

待っている側は、あと1時間と思っているため、それよりも早く到着した遅刻した方をそれ以上、お咎めもしなくなる可能性が高いです。

 

 後知恵バイアス

最後は、後知恵バイアスです、これは皆さんの周りにもきっといると思います。物事が起きた後に「こうなると思ってたんだー」と言われたら、それは後知恵バイアスです(笑)論理的な根拠はなく、あたかも自分には予測可能であったかのような発言をする事です。

 

今回ご紹介したバイアスはほんの一部です。他にも多くの「思考の偏り」=バイアスがネット上にありますの、ぜひ調べてみてください。

 

 

  システム1とシステム2の思考(Dual Process Theory)

先ほど、ファッションの話が聞きたいのは、高身長のイケメンだと答えた方が多かったと思います。ここでは、そういった思考になりやすいシステム1とシステム2の思考について紹介します。

 

システム1・・・直感的であり、スピード重視の思考

システム2・・・論理的であり、熟考する思考。意識的

 

脳は何かを決める時に、無意識に脳内にあるこのシステム1とシステム2を使い分けています。

 

例えば、日々忙しいビジネスマンがいたとします。何か判断をしないといけませんが今十分な時間がありません。そういった場合は、過去の経験則から直感的にシステム1の判断を使うことがよくあると思います。

 

逆に、大事な決断が必要な場合(企業買収を行うか否か、家や車を買う、など)は、ほとんどの方が直感的ではなく、時間をかけて、熟考し論理的な考えをすると思います。それがシステム2の思考という事です。

 

どちらが良い、悪い、という訳ではなく、それぞれの特徴を正しく理解して使うこと、どちらかの思考に偏っている事に自分で気づく事が大切です。例えば、激務のビジネスマンがいつも熟考、論理的なシステム2の思考だと、正直仕事がまわらないですよね(笑)

ですので、今自分がどちらを使って判断したのかを理解し、状況に応じて使い分けていく!と覚えておきましょう。

 

 

  さいごにバイアスとうまく向き合うためには

大事なことは、誰でもバイアスにかかるという事です。

以下は一文は、マイクロソフトの会長であったビル・ゲイツが1994年に発した言葉です。

 

「あと10年は、インターネットの商業的な可能性はほぼないと思う」

 

皆さんどうでしょうか???

 

1994年ということは翌年、そう「Windows 95」がマイクロソフトから発売された一年前の言葉なんです。

Windows 95の発売を機に、爆発的にインターネットが世界中に広がっていきましたよね。そう、ここで言いたい事は、ビル・ゲイツ間違ったじゃん!という事ではなく、あのマイクロソフトの会長、ビル・ゲイツですら、自分の判断を過信する「自意識過剰バイアス(Overconfident bias)」にかかっていたという事です。どんなに成功を積み重ね方でも、必ずバイアスがあります。

 

 

という事で今回は、なぜバイアスにかかるのか、その種類、特徴をお伝えさせていただきました。

バイアスは誰でもかかるものであり、取り外しできるものではありません。ですので大事な事は、「人は常にバイアスがかかる」という事を自分自身で正しく理解しておくという事です。

 

そうすれば、今の考えは偏ってるかな?と気づいたり、周りの方の考えを聞く中でも同様に、ちょっと偏ってるな?と気づく事ができると思います。物事を判断する上で正解はないのですが、こうすることで少しでも、「よりよい選択」に繋がりますよね!

 

 

  まとめ

最後にまとめです。

 

バイアスの存在を正しく理解する

バイアスは誰しもかかるものである

自分の無意識に気づくため、常に批判的な意見を持つ、または第三者の意見に耳を傾ける

 

特にバイアスがかかった状態で、何かを決断する時には注意が必要です。

自分の思考が偏った状態で判断してないか、客観的に見つめ直すシステム2の思考を取り入れてみましょう。誰かの意見を受け入れたり、あえて批判的な意見を聞く事も、重要ですね。

 

今は答えがない多様な時代ですので、日々正解が変わっていきます。ですので「正しく」ではなく、「よりよい」をモットーに、自分のバイアスと向き合っていきましょう!

 

次回は、「目的(Purpose)」についてご紹介をしたいと思います。

日々仕事をしている中で、上司の方から「その目的は?」と言われた経験があるのではないのでしょうか?目的を正しく理解する事で判断に迷いがなくなったり、組織、プライベートでも人がついてきてくれるようになります。ぜひお楽しみに!