時代の変化についてけない中間管理職

不確実性が高く多様性が必要な時代に管理職に必要な息抜き方をお伝えしていきます。

パーパス経営の重要性と個人の信念、価値観との関係性

これまで、「システム思考」で要素ごとのつながりを明らかにして、人間がもつ「思考の偏り、バイアス」についても紹介をさせていただきました。今回は、最近よく目にするパーパス経営と、パーパスがもたらす個人の信念、価値観との関係性についてご紹介します。

 

  企業のパーパス、目的とは?

企業で言うパーパス、目的は、その企業の「存在意義」そのものです。

パーパス経営を導入する企業が近年増加しています。その理由の1つとして、SDGsと言った持続可能な未来への貢献が必要になった時代の変化もあります。企業はこれまでの単純な営利目的の経営から、事業を通じてよりよい未来を創る、社会的責任を果たす経営にシフトしています。

 

ですので、パーパスを設定している企業というのは、この社会的意義の要素も含んでいる企業とご理解ください。

 

  ミッション、ビジョン、バリューとの違いは?

ここでは、パーパスとよく混同しやすいミッション、ビジョン、バリューとパーパスの関係性についてご紹介します。言葉の定義の幅もありますのでこれが正解とは思っていませんが、大枠のイメージだとご理解ください。

 

ミッション

企業の目的を実行、達成するために何をしていくのかを明示したもの(What)

ミッションはよりパーパス実現に向けて、具体的にイメージがしやすい目標になります。

 

ビジョン

企業として将来、どういった状態になっていたいかを明示したもの(How)

パーパスを実現するには、どういった状態でる必要があるのか、それをHOWで表現しています。

 

バリュー

企業の目的を達成するために必要な、共通の価値観。

パーパス、ミッション、ビジョンを実現するための企業としての共有の価値観を言語化したものです。行動指針にも近い場合があります。

 

それぞれの言葉の定義にも幅がありますので、あくまでも目安としてお考えください。ミッション、ビジョン、バリューにとってパーパスはさらに上位概念の存在意義と表現できます。パーパスを実現するために何を(ミッション)、どのように(ビジョン)、どういった価値観ですすめるか(バリュー)と覚えておきましょう。

 

ちなみに皆様はゴールデンサークルという言葉をご存知でしょうか?

優れたリーダーはWHY(なぜ?)から相手へ行動を促すとされています。

 

 

 

 

以下は有名なTEDにあるサイモンシネックのゴールデンサークルについての動画ですので、ご存知ない方はぜひご覧ください。

サイモンシネックの優れたリーダーはどうやって行動を促すのか

 

 

  パーパス経営が成功した事例

それではここで企業のパーパスと、そのパーパス経営が成功した事例をいくつか紹介します。

 

Amazon「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」

 

スターバックスコーヒー「人々の心を豊かで活力あるものにするためにーひとりのお客様、一杯のコーヒー、そして一つのコミュニティから」

 

パタゴニア「地球が私たちの唯一の株主」

今回は、アウトドア用品メーカーで有名な、パタゴニア(Patagonia)のパーパス経営の事例をご紹介します。

パタゴニアは創設時からパーパスを変更していますが、本質的な社会的意義は変わっていません。パタゴニアはパーパス経営に有名な企業ですので、パーパスに基づいた意思決定をいくつかご紹介します。

 

ピトン製造から気づいた環境破壊

パタゴニア創設者のシュイナード氏はもともとはクライマーでした。そんなシュイナード氏が19歳の時に創った会社がパタゴニアです。クライマーだったシュイナードは、ピトンの製造(ピトンとはハンマーを使って岩に刺し、それを頼りに人間が体重をかけてクライミングを行うもの)を軸にビジネスを行っていましたが、クライマー人口が増えていくにつれ、人気のクライミングルートの崖が深刻なダメージを受けていることに気づきました。

 

シュイナード自身もクライミングが大好きで、これからもお客様にクライミングを楽しんでほしいと考えました。しかし、崖も破壊したくない。ピトンの代理となるものは、見つからないか。そんな発想からたどり着いたのが、「アルミのチョック」でした。

アルミチョックとは、もともと岩山に存在する自然な割れ目に差し込み、展開することで固定できるクライミング用のアイテムで、イギリスではすでに広く使われていました。アルミであれば、ハンマーを使わずに手で岩に押し込むことができるため、ハンマーほどの破壊力がなく、岩の形を変えないのではと考えたのです。クライマーにとっても、地球にとっても、シュイナード・イクイップメントにとってもいい答え、すなわちWIN-WIN-WINを見つけられたのです。

 

「C8」の環境への悪影響問題

これまで多くのアウトドア用品を取り扱う企業は、ジャケットなどに「C8」というフッ化炭素ベースの素材を使って製造を行ってきました。めちゃめちゃ撥水性にすぐれた雨用のジャケットです。最近少し見なくなりましたよね?

 

しかしながら時代の変化、環境の意識の変化とともに、この「C8」が環境に悪影響があるとGreenpeaceという研究期間から報告をされます。業界他社はこれを認めず、自社製品がいかにすばらしいか、環境に悪影響がないかを消費者へ訴える行動にでます。しかし、パタゴニアの対応は違いました。まっさきにこの「C8」から「C6」という同じフッ化炭素ベースの素材ではありますが、環境への影響がでないとされる繊維にすべての商品を切り替える事を宣言します。企業として、原材料、製造、物流、販売とどれだけのネガティブな影響がでるかは想像の通りですが、それを顧みず、パーパスに基づいた判断だといえます。

 

ちなみにその当時のパタゴニアのパーパスは以下です。

「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。ビジネスを手段として、環境危機へのより良い解決策を実行していく。」

 

まさに地球を救うための行動であり、環境危機に対して、自ら行動した経営だったと言えます。

 

1% for the Planet

パタゴニアは創設時から自然環境の保護や回復のために、環境団体に売り上げの1%を寄付し続けています。また2002年には、創設者と共に非営利の自然環境保護に貢献するビジネスを目的とする団体を設立しました。

 

これ以外にも多くのパーパスに基づいた、企業としての行動、意思決定を行っています。ただただすごいなという感想と、自分だったらここまで地球に対して貢献できるかはわかりません。

 

そして最後に2022年9月、創設者のシュイナード氏は自身とその家族が保有する約30億ドル(約4300億円)の全株式を、環境保護に取り組む特別なトラストと非営利団体に譲渡しました。

 

ここまでパーパス経営を一貫した創設者とも言えますし、それだけパーパスでもある「地球が私たちの唯一の株主」を追求し続けた企業がパタゴニアです。

 

 

  なぜ企業のパーパスと個人の価値観や信念が重要なのか?

昨今、仕事という概念がかわりつつあると思います。これまでは、単純に労働に対する対価をもらう「仕事」から、仕事を通じて、自分の人生にどういった影響があるのか、社会に対してどういった影響が与えられるのか、そう考える方も増えてきていると思います。

今は、仕事の主体が個人の時代変わっています。だからこそ多様な時代なのです。

個人の価値観、信念を尊重しながら、会社というツールを通じて、どういった貢献ができるのかが重要です。

 

では個人が会社を選ぶ基準は何でしょうか?

 

その一つにパーパス経営ができている企業という選択肢が増えたと思います。社会的責任を果たすパーパスを掲げている企業、そして個人としても大事している価値観、その方向性が同じである企業が選ばれる時代です。

 

  まとめ

パーパスは企業にとっての社会的責任の証明であり存在意義

 

時代の変化とともに企業のパーパスも変わり続ける

 

企業のパーパスと個人のパーパスが重なる部分を探す

 

無意識のバイアス(思考の偏り)がもたらす判断への影響

前回は「システム思考」をテーマに、問題は表面的なものではなく、そのシステムを構造的に捉える事、そしてその「つながりを明らかにする事」を紹介をさせていただきました。

 

今回は構造を見たり、判断したりする上でどうしても避けられない、人が持つ思考の偏り、バイアスについて紹介したいと思います。バイアスは無意識であり、全員思考の偏りがあります。

 

第二回は、バイアスがもたらす判断への影響について紹介をしたいと思います。

 

  そもそもバイアス(思考の偏り)とは何か?

バイアスとは英語で「偏り」を表します。ここでは一般的に言われている「思考の偏り」と表現していきます。

 

それではここで、簡単にバイアスを確認するクイズです。

 

「高身長のイケメンと、明らかにメタボな男性がいて、それぞれ今年はやりのファッションについて話をしています。皆さんはどちらの話の方が説得力があると思いますか?」

 

おそらく前者の「高身長のイケメン」の方を選んだ方がほとんどだと思います。これがバイアス、思考の偏りです。実際には話の内容は聞いていないのにも関わらず、そう思い込む心理状態です。

 

  なぜバイアスがかかるのか?

それではなぜ人はバイアスにかかるのでしょうか?

 

基本的なメカニズムとして人間は、自分の直感、または経験則から情報を引き出し、答えを紐づけてしまう生き物であると言われています。ここで言う直感的な思考、論理的な思考については後述しますね。

 

先ほどファッションの例で言えば、高身長のイケメンなんだから、かっこいいファッションに違いない!という思い込みが前提としてあるため、イケメンの話を聞きたいという、偏りにつながるという事になります。

 

  バイアスの種類

それではここでは代表的なバイアスとその例をお伝えします。ご自身の経験でも当てはまるかぜひご確認ください。

 

 確証バイアス(Confirmation Bias)

自分が正しいと思う情報を中心に収集してしまうバイアスです。

人は誰しも思い込みを持っています。他にどのような情報があっても、自分の判断が正しいという証拠ばかりを集めてしまう傾向があります。

 

例えば、インターネットでショッピングをする時に、その商品の評価やレビューを参考にする事があると思います。その内容(情報)を見ている時、自分にとって都合が悪い情報を排除し、都合の良い情報のみに目がいっていませんか?それが、自分の判断が正しい、その補足となる情報を中心に見てしまう、確証バイアスです。

 

 

 生存者バイアス(Survivalship Bias)

これは、残ったもの(生存したもの)の結果のみで判断してしまうバイアスです。以下の写真をご覧ください。

 

これは戦争中に無事に自国へ帰還できた、軍用機の損傷位置を表したものです。赤い点は帰還できた軍用機を調べ、損傷していた箇所を表したものです。

 

あなたは軍用機の設計エンジニア、この画像を見て、どこを強化しますか?

 

ほとんどの方が損傷があった赤い点の箇所と答えるのではないでしょうか?ここには大きな落とし穴があります。これは残ったもの=無事に帰還できた軍用機の情報のみです。逆に赤い点以外を打たれた軍用機は、残念ながら戻ってくることができなかった、そういうことになります。本当に強化するべきポイントは赤い点がない箇所になります。

 

生き残った情報のみ、今見えている情報のみで判断してしまう、これが生存者バイアスです。

 

 

 サンクコスト効果(Thankcost)

これは、すでに投資をしたものを正しいと考えてしまい、合理的な判断ができなくなってしまうバイアスの事です。心情とすると、「もったいない」と思う気持ちがでているバイアスです。

 

ランチ時間に、お店の前に行列ができていてすでに20分待っていたとします。あと数人がでてくれば自分もお店に入れます。あなたならどうしますか?

 

すでに20分待ちあと数人なら待つ方が多いのではないでしょうか?自分の時間をすでに投資しているものを正しいと考えてしまっており、本当に食べたいランチなのかという合理的判断ができていないですよね。これがサンクコスト効果です。

 

 

 現状維持バイアス(Status duo Bias)

これはその名の通り、自分が知らない事や未知の状況は受け入れたくないというバイアスです。人は今問題がなければ変わる必要性がない=変化を嫌う生き物です。

 

日常生活でいうと、通勤、通学で同じ道をいつも通る事や、同じお店で同じメニューしか注文しない事もこの現状維持バイアスが起きている心理状況になります。

 

 

 自信過剰バイアス(Overconfident Bias)

自信過剰バイアスは、論理的な根拠はないが、自分の能力や判断に自信を持つバイアスの事です。もちろん「自分はできる!」という気持ちを持つ事は大事ではありますね(笑)

 

例えば、世界最高峰の山、エベレストにこれまで何度も登頂を成功した方がいるとします。おそらくその方は、「次の登頂も成功できる」と言うと思います。自分の過去の経験から自信を持った発言であると言えますね。

 

 

 アンカリング効果(Anchoring

続いてはアンカリング効果についてです。これは最初に提案された選択肢の情報を軸に考えてしまうバイアスです。

 

皆さんは遅刻をした経験はありますか?その時に相手に対してこのアンカリングを無意識に使っています。例えば、遅刻をして本来であればあと30分で到着できるのに、「あと40−50分」と言ったり、「あと1時間かかる」と言ったり、より遅く伝える事はありませんか?

待っている側は、あと1時間と思っているため、それよりも早く到着した遅刻した方をそれ以上、お咎めもしなくなる可能性が高いです。

 

 後知恵バイアス

最後は、後知恵バイアスです、これは皆さんの周りにもきっといると思います。物事が起きた後に「こうなると思ってたんだー」と言われたら、それは後知恵バイアスです(笑)論理的な根拠はなく、あたかも自分には予測可能であったかのような発言をする事です。

 

今回ご紹介したバイアスはほんの一部です。他にも多くの「思考の偏り」=バイアスがネット上にありますの、ぜひ調べてみてください。

 

 

  システム1とシステム2の思考(Dual Process Theory)

先ほど、ファッションの話が聞きたいのは、高身長のイケメンだと答えた方が多かったと思います。ここでは、そういった思考になりやすいシステム1とシステム2の思考について紹介します。

 

システム1・・・直感的であり、スピード重視の思考

システム2・・・論理的であり、熟考する思考。意識的

 

脳は何かを決める時に、無意識に脳内にあるこのシステム1とシステム2を使い分けています。

 

例えば、日々忙しいビジネスマンがいたとします。何か判断をしないといけませんが今十分な時間がありません。そういった場合は、過去の経験則から直感的にシステム1の判断を使うことがよくあると思います。

 

逆に、大事な決断が必要な場合(企業買収を行うか否か、家や車を買う、など)は、ほとんどの方が直感的ではなく、時間をかけて、熟考し論理的な考えをすると思います。それがシステム2の思考という事です。

 

どちらが良い、悪い、という訳ではなく、それぞれの特徴を正しく理解して使うこと、どちらかの思考に偏っている事に自分で気づく事が大切です。例えば、激務のビジネスマンがいつも熟考、論理的なシステム2の思考だと、正直仕事がまわらないですよね(笑)

ですので、今自分がどちらを使って判断したのかを理解し、状況に応じて使い分けていく!と覚えておきましょう。

 

 

  さいごにバイアスとうまく向き合うためには

大事なことは、誰でもバイアスにかかるという事です。

以下は一文は、マイクロソフトの会長であったビル・ゲイツが1994年に発した言葉です。

 

「あと10年は、インターネットの商業的な可能性はほぼないと思う」

 

皆さんどうでしょうか???

 

1994年ということは翌年、そう「Windows 95」がマイクロソフトから発売された一年前の言葉なんです。

Windows 95の発売を機に、爆発的にインターネットが世界中に広がっていきましたよね。そう、ここで言いたい事は、ビル・ゲイツ間違ったじゃん!という事ではなく、あのマイクロソフトの会長、ビル・ゲイツですら、自分の判断を過信する「自意識過剰バイアス(Overconfident bias)」にかかっていたという事です。どんなに成功を積み重ね方でも、必ずバイアスがあります。

 

 

という事で今回は、なぜバイアスにかかるのか、その種類、特徴をお伝えさせていただきました。

バイアスは誰でもかかるものであり、取り外しできるものではありません。ですので大事な事は、「人は常にバイアスがかかる」という事を自分自身で正しく理解しておくという事です。

 

そうすれば、今の考えは偏ってるかな?と気づいたり、周りの方の考えを聞く中でも同様に、ちょっと偏ってるな?と気づく事ができると思います。物事を判断する上で正解はないのですが、こうすることで少しでも、「よりよい選択」に繋がりますよね!

 

 

  まとめ

最後にまとめです。

 

バイアスの存在を正しく理解する

バイアスは誰しもかかるものである

自分の無意識に気づくため、常に批判的な意見を持つ、または第三者の意見に耳を傾ける

 

特にバイアスがかかった状態で、何かを決断する時には注意が必要です。

自分の思考が偏った状態で判断してないか、客観的に見つめ直すシステム2の思考を取り入れてみましょう。誰かの意見を受け入れたり、あえて批判的な意見を聞く事も、重要ですね。

 

今は答えがない多様な時代ですので、日々正解が変わっていきます。ですので「正しく」ではなく、「よりよい」をモットーに、自分のバイアスと向き合っていきましょう!

 

次回は、「目的(Purpose)」についてご紹介をしたいと思います。

日々仕事をしている中で、上司の方から「その目的は?」と言われた経験があるのではないのでしょうか?目的を正しく理解する事で判断に迷いがなくなったり、組織、プライベートでも人がついてきてくれるようになります。ぜひお楽しみに!

 

システム思考をわかりやすくまとめてみた

第1回目は最近よく耳にする「システム思考」について。

    

「システム思考」とは?

「システム思考」について書かれているサイトはいくつかあり、解釈はさまざまです。

私自身が「システム思考」とは?と聞かれて一言で表すなら、

それはつながりを明らかにすること」であると言えます。

 

問題が起きる時には、必ず原因があります。

その原因の発生には、そうさせているシステムが必ず存在しています。

物事を単体や表面上だけで見るのではなく、相互の関連性、関係性に着目し、

静止的ではなく動的に、断片的ではなく全体的に、

そして変化を捉える見方がシステム思考です。

 

ちょっと言葉では説明が難しいのが、このシステム思考なのですが、

参考例や考え方を以下に書いていますので、ぜひ理解が深まればと思います。

 

ちなみに「システム思考」という考え方は、

ピーター・M・センゲ(MITマサチューセッツ工科大学経営学者)

という方が1990年代に改めて広めた理論になります。

 

ピーター・M・センゲ 1947年-
クリス・アージリスが最初に提唱した「学習する組織」という理論を世界に広める。

SoL創設者、マサチューセッツ工科大学の上級講師であり経営学

 

    

なぜ今、システム思考が必要なのか?

 

そもそもなぜ今、システム思考という考え方が必要なのでしょうか?

 

それはビジネス環境の複雑性そのものだと言えます。

 

社会的には、いろいろな価値観、考えをもった多様性のある方が増加する一方、

物事を構成する要素も物理的にも増え続ける一方です。

また、昨今の予期しない感染症など、外部環境の変数も増加しています。

 

こういった不確実性が高い社会だからこそ、

物事を単体で捉えるのではなく、システム全体として捉えるが事が重要になっています。

 

ここで一つ、似たような言葉ですが意味が異なるので紹介します。

Complecated System・・・複雑化されたシステム

Complex System・・・複雑なシステム

 

さて今回の「システム思考」は、どちらの考えに近いでしょうか?

 

Complecated Systemは、その名の通り複雑化されたシステムです。

複雑化されたシステムの特徴は、システム自体は複雑(例えば車や飛行機の構造などは複雑ですよね?)であるものの、

入力に対して出力が同じであるなど、その動作や、その先の動きが予測できる特徴を持っています。

 

もう一つのComplex System、複雑なシステムは、

一言で表現するのなら「答えがない」システムの事です。

    

システム思考の

「答えがない」システムの例として、世界の金融市場で考えてみるとどうでしょうか?

 

金融市場の動向を見ていく上で、

景気動向金利水準、為替の影響、国内外の政治の動向、国際情勢、災害・天候、外国人投資家の動向・・・

などの複数の要素があります。(この時点で複雑ですが、これ以外にも要素は複数あります)

 

こういった要素同士が複雑に共鳴、影響し合いうからこそ、

今後の経済の行方は誰にも予測できない、

まさに「答えがない」システムの代表例です。

 

またここでもう一つ大事なポイントがあります。

それは、要素同士が複雑に影響しあい、創発する事です。

 

景気動向(要素1)に左右され、金利(要素2)が変動し、外国人の投資家の投資(要素3)の動向も変わります。その結果、金融市場に投資マネーが流入しなくなり(結果的に要素がからみあい創発された現象)、経済が停滞する可能性があります。

 

ここで皆様、おわかりでしょうか?

 

冒頭で述べたシステム思考とはまさにこの

「つながりを明らかにすること」そのものなのです。

 

 

    

システムとして考えるために

重要な事とは?

それではどうやって、「システム思考」という考え方を使っていくのか?

 

重要なポイントを2点紹介します。

「正しい構成要素に分解する事」

「分解した要素同士には創発作用があること」

 

この2点を正しく理解することがシステム全体を理解することにつながります。

 

皆様は、鳥の目、虫の目、魚の目という言葉を聞いた事がありますか?

 

鳥の目・・・高い位置から「俯瞰的に全体を見回 して」見る視点。物事をZoom Outして見る事ができる視点

虫の目・・・「複眼的に物事を深く」見る視点、対象に対してZoom Inして見る事ができる視点

魚の目・・・「時間軸の流れを」見る。対象が時間の経過と共にどういった影響がでるのかを見る視点

 

いかがでしょうか?

これがシステム全体を見るために重要になる視点です。

 

例えばここでもう一つ、「車の渋滞」を例を出したいと思います。

「車の渋滞はなぜ起こるのか?」と聞いて皆様は何が原因と考えますか?

 

運転手の居眠り、思わぬ事故の影響、交通ルール違反車両があった、などでしょうか?

もちろんそれも大事な要素です。ただしそれだけでしょうか?

ここでシステム全体を理解する上で使う視点が、鳥の目、虫の目、魚の目です。

 

鳥の目であれば、全体を俯瞰して見るので、Zoom Outしたものの見方です。

全体を俯瞰した場合、他の道路がすでに渋滞していて迂回車が多く渋滞したかもしれませんし、

数十キロ先で大きなイベントがあった関係で渋滞している、

また、航空会社がストライキであったため、そもそも車の利用が増えたのかもしれません。

天候が雨で渋滞したのかもしれませんね。

こういったより大きな枠で見ることが鳥の目、Zoom Outしてみる方法です。

 

次は、虫の目で対象に対してZoom Inして見ます。

虫は人間よりも小さく、対象物をより近くでみるので、近眼的に複眼で見るという見方です。
例えば道路を対象にした場合、道路上に小さな陥没があった事で渋滞が発生したのかもしれません。

また、そもそもペーパードライバーで運転が苦手だったのかもしれません。

さらにドライバーにZoom Inしてみると体調が悪いので運転が遅くなったため、渋滞になったという心理状態の可能性もあります。
このように、対象に対して複眼的にZoom Inしていく見方が虫の目の考え方です。

 

最後に魚の目、これは物事を時間軸で捉えることです。

今回の例で言えば、渋滞の時間帯がラッシュアワーの時間帯で渋滞した、

高速道路であれば夜間休日割引の時間帯での混雑が渋滞を引き起こしたかもしれません。

お盆や年末年始ももちろん時間時期の一つです。それが原因で渋滞する可能性もあります。

 

こういったものの見方を、鳥の目、虫の目、魚の目を使って見る事で、

原因を構成する要素をもれなく把握することができ、また要素同士の創発性もあわせて考えることができます。

 

 

    

システム思考のメリデメ

システム思考のメリットはなんといっても、解くべき課題の精度が上がる点です。

 

課題の要素を分解し、創発性を理解する、そうすることで原因特定に役立ちます。

しかし、残念ながらこれも100%ではありません。

 

それは今日のシステムが常に複雑さを増し続けているためです。

そのため100%ではないが、角度、精度をあげるための思考法とご理解ください。

 

またそれ以外のメリットとして、課題を進めていく上で、全体のコンセンサス(共通認識)が容易になります。

抜け漏れがない状態で考えられているため、次の行動が早くなるというメリットもあります。

 

そして私個人が最もこのシステム思考がすばらしいと感じているのが、

原因を特定しにいった場合に、人が原因にならないという点です。

この考え方は「○○さんが悪い」といったような単一的な考え方では終わりません。

「〇〇さんをそうさせた物が何なのか?」、その背後にある理由、背景にまで眼をむけます。

虫の目を使い複眼的に見て、〇〇さんをそうさせたシステム全体を見る事が可能になるためです。

 

 

逆にデメリットは、時間がかかるという点でしょうか?

課題を解決する上で、じっくり時間をかけられればよいですが、そうではないビジネスシーンもたくさんあります。

 

そんな時に「要素を一つ一つ・・・」「えっと、要素の創発性が・・・」「鳥の目でみると・・・」と、

考えては時間とのバランスが悪いです。だからこそビジネスマンはある程度の経験があり、

経験に基づく直感で判断されている方も多いのではないでしょうか?

 

しかしながら一つ言えることは、現在、私たちを取り巻く環境は、

過去の生産労働型とは違い、不確実性の一途を辿っています。

そういった中で正しく意思決定するためにも、このシステム思考が重要であることは間違いのない事実です。

 

次回は最後に記載した、個人がもつ直感、経験則が判断にどういった影響をもたらすのか、

行動する上での科学(バイアス)についてご紹介いたします。

 

 

 

 

システム思考のまとめ 

 

●複雑性が増していく環境下だからこそ、重要な考え方の一つ

 

●物事を表面的、単眼でみるではなく、そうさせているシステム全体を見る、つながりに眼を向ける

 

●構成要素を分解して(鳥の目、虫の目、魚の目)見る

 

●分解した要素同士は創発しあい、影響力を高めあったりする

 

●100%の正解はない、不確実性の中にいる事を理解する